英語力そのものはすぐに上げることはできず上達には何か月、何年とかかるものだと思いますが、ほんの少しの工夫でより効果的な英語コミュニケーションが可能な時もあります。ビジネスの場面で通訳として会議に参加していて感じたことをいくつか記載してみます。

目次

  1. 話の幅を狭めていくイメージ
  2. 例1
  3. 例2
  4. 例3

ビジネスの英語というと、would you, could youなど丁寧表現のイメージがあるかもしれません。ただ、通訳としていつも感じているのは、大切なのは単語レベルや文レベルで敬語・丁寧表現を使うことではなくて、相手が求めていることを想像してストレスや不安をできるだけ与えないような話のもっていきかたをするという情報の出し方、構成のほうが効果的なコミュニケーションにつながります。

話の幅を狭めていくイメージ

まず、基本的に相手からみて話の流れが予測できる(predictable)ということが大切です。最初の数秒で、相手が求めている情報を出したり、その後の数十秒の流れが想像できるととてもいいと思っています。東西南北どこにいくかわからないという会話では相手も戸惑ってしまいます。それよりは自分はこの会話では北に向かおうと思ってるんだけどそれでいいかな、少しずつ進んでいくね、とこちらの手の内を早い段階で明らかにすることがスムーズな理解、心理的安心につながります。(テーマパークのXRライドでもゲストが乗り物酔いしないようにキャラクターの動きにあわせた方向にアトラクションが動いていくなど視線誘導する=ゲストが次の動きを予測できるように設計段階で配慮するようなのですがそれを聞いた時に面白いなと思いました)

日本語でもそうかなとも思うのですが、

「あの!!どうしてもききたいことがあるんですけど、」

といきなり言われるとドキッとします。つかみはいいでしょうが、「え、これから何をきかれるんだろう」とシチュエーションによっては相手に不安を与えるかもしれません。一方、「週末のテニスの件なんですけど、」と話が始まれば、「(テニスの話ね、コートのことかな?)」など相手はその次の流れをテニス関連で想像することになります。日本語ではどちらでもいいかもしれませんが、外国語でのコミュニケーションではこの「今からテニスの話をしますよ」という前振りが役に立つことは多いです。こちらの英語が仮に100点の内容でも相手側(非英語ネイティブ)の英語力が低ければ70しか受け取ることができないということがありえるため、今からテニスの話をしますよ、と事前に前振りをすることで相手が「よし、そうかテニスの話だな」と準備ができて80,90伝わるコミュニケーションになる可能性があります。(これは非ネイティブに便利なグローバルイングリッシュの考え方ですが、交渉などの駆け引きやサプライズを演出したい場合、かけあいを楽しむ場合は話し方はかわると思います。スティーブ・ジョブズの芸術的なプレゼンなども別次元です)

例1

伝わることを重視する会話では、例えば、
「ボブ、来週の水曜の会議の資料って誰が作るの?」というのを英語できくとして、

Could you tell me who’s going to prepare the material for the meeting next Wednesday, Bob?

ときくこともできますが、それよりは、

Bob, quick question. About the meeting material for next Wednesday, who’s working on it?

「まず名前を呼んでBobの注意を引く(Bob: え?俺への質問?)」、「質問があってさ(Bob: 質問?何についての質問かな?)と相手が準備できる」、「来週の水曜の会議の資料なんだけど(Bob: あーあのパワポのやつかな)」

という構成のほうが伝わりやすいときもあります。

例2

もう少し長いやりとりで、これは実際の会議であったケースなのですが、日本人側が外国人側に今後新たな報告書の提出をお願いをするというシーンでした。

外国人A:So, do we have to report this on a quarterly basis? 「四半期ごとに提出するってこと?」

日本人A:あー let me explain background information.「背景から説明しますね」
(外国人Aが思っていそうなこと:背景情報はいらない、yesかnoを先に教えて)

日本人A:The other day the CEO said ~(数分間の背景の説明。日本人側としては、「こういう理由で会社としてやっていくから、上の人もこう言ってるし、まあしょうがないってことで、理解してね」と丁寧に説明している。ただ外国人側と日本人側の温度差を感じる。
(外国人Aが思っていそうなこと:理由はいいって、先に結論を教えて、経緯がなんでも従うから経緯はきく必要ないもん、どうせ断る権利ないだろうし)

<背景の説明が数分> 

<外国人この時点でちょっと疲労気味>

日本人A:「ここまでが背景で、じゃあここから背景を踏まえての依頼事項の詳細を説明するね」

<依頼事項の説明数分>

日本人A:あ、時間なくなった。会議延長するね。ごめんね。


それよりは、

外国人A:So, do we have to report this on a quarterly basis? 「四半期ごとに提出するってこと?」

日本人側(返事例):The answer is yes. 「そうです」
(外国人Aが思いそうなこと:yesか、まじかよめんどくせー、くそ、、なんでだよ)

日本人側(例):Sorry, I understand this might be a lot of work for you. 「嫌だろうとは思うんだけど(と共感を示す)。The reason is~「ごめんね、一応理由としてはね」(理由を一文くらいで簡単に話す)

日本人側(例):I could explain how this started in detail if you are interested.「興味あるようならもっと背景の詳細はなすこともできるけど」、と言うことで相手に選択肢を間接的に示してリスペクトを示す。ただ経緯に限らず断る選択肢はないのでできればそこに時間を割きたくない。そこで次の文章も続けて言うことでどうしても理由がききたいと外国人側がいうのでなければ相手に口を挟む隙を与えない。

But, in the interest of time,「ただ、時間のこともあるので、手っ取り早くいうと~」と日本人側からいったん言うべきことがあれば言い切る。そのあとでポーズ。外国人側の反応をみて、もっと教えてといってこなければ、背景の情報はそれほど求められていないハズ。

こういう構成が常にいいかはおいておいて、この流れであれば、時間がないときに、相手にある程度間接的に選択肢を与えつつ詳細の背景の説明を割愛できます。

ほかには、時間の関係で丁寧に話すことができない場合、ある程度一方的にリクエストをこちらから話した後で、「こんなリクエストしてごめんね」
But I still want to make things easy for you. ~「ただ、できるだけそちら側(外国人側)の手間を省きたいとは思っていてさ・・・、たとえば~」と、寄り添う、みたいな構成もありかもしれません。

相手が知りたい順番で情報を出すことで話のロジックがおいやすく(質問に対して背景の説明ではなく、いったんYESかNOを返すなど)、「こちらの立場を考えてくれていて話がわかるな」という印象につながることがあると思っています。

また、会話をコントロールすることが重要な時もあります。特に相手が英語ネイティブの場合、オープンクエスチョンを投げかけて相手に自由に話をさせては会議時間中に収拾がつかなくなることもあるので、例えば、さきほどの I could explain how this started in detail if you are interested. But, in the interest of time, など「もっと説明もできるけど時間の関係で~」=「問題なければ話を次に進めたいんだけど~」と文をつなげて、よほどの質問でなければQ&Aは別の機会で、というこちらの意向を暗に伝えることが必要なこともあると思います。

例3

別の例ですが、顧客との会話で、

外国人側:「協業相手と最終製品まで作ってる?というのもサンプル欲しいって言ったらもらえる?」

という質問に対して、

日本人側:「AAA社(最終製品を作っている会社ではない)とはサンプルを作っています」(「最終製品のサンプルはありません」、という趣旨なのですが直接NOというのを避けた回答)

というやりとりがありました。

かけひきが必要な場合など回答をぼかすこともあると思いますが、基本的にはQAがかみあうように考えたいです。

サンプルがあるのであれば、
Yes, samples are available upon your request. 

「ご希望のAAAというサンプルは今はないけど、BBBというサンプルはありますよ」というなら
No, not AAA samples at the moment, but we can provide BBB samples. 

という言い方が思いつきます。

スティーブ・ジョブズや文学的なネイティブの美しい構成の英語には憧れますが非ネイティブにも伝わりやすい構成というのも悪くないのではないでしょうか。